障害年金は、被保険者であった間に、初めて医師等の診療を受けた傷病により一定の障害の状態になったときに受給できる国の公的年金の制度です。障害年金、障害者年金、障害基礎年金、障害厚生年金など様々な言葉が巷では存在していますが、これらの用語のうち、公的年金制度として正確な名称は、障害基礎年金、障害厚生年金の名称です。それらを総称し、障害年金といいます。また、障害者の年金であることから障害者年金という表現が一般には存在していますが、障害者年金という制度が別にあるわけではありません。
一般に「いったい、どの制度から年金が支給されるのだろうか」という疑問があろうと思われますが、「初診日においてどの制度に加入していたか」ということで、障害基礎年金、障害厚生年金のうちの、どの制度から障害年金が支給されるかが決まります。ですから、初診日がいつで、そのときにどの年金制度に加入していたかが重要な意味を持ちます。
●国民年金(自営業者や専業主婦、学生が加入する制度)に加入していたときに初診日がある場合で、病気やケガで一定の障害が残ったときは障害基礎年金が支給されます。障害基礎年金は、1級と2級だけです。3級はありません。ですから同じ病気の人でも、初診日が厚生年金なのか国民年金なのかで、もらえたりもらえなかったりするのです。
●厚生年金保険や共済年金に加入していたときに初診日がある場合で、病気やケガで一定の障害が残ったときは障害厚生年金が支給されます。障害厚生年金は1級〜3級まであります。また、1級と2級に該当した場合は、障害基礎年金も併せて支給されます。(この他、一定要件に該当する場合は、障害手当金という独自給付があります。)
障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)は、昭和60年改正(昭和61年4月実施)で基礎年金制度が導入され、全国民共通の障害基礎年金が支給されるようになりました。厚生年金保険の加入者には、障害厚生年金が障害基礎年金(1・2級のみ)にプラスして支給されます。
厚生年金保険 | 障害厚生年金 1級 |
障害厚生年金 2級 |
障害厚生年金 3級 |
障害手当金 |
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国民年金 | 障害基礎年金 1級 |
障害基礎年金 2級 |
- | - |
障害の程度 |
障害年金を受給するためには、加入要件・納付要件・障害状態要件の3つの要件を満たしていることが必要です。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
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加入要件 | 初診日*1において国民年金の被保険者であること。 又は、初診日に、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいたこと。 |
初診日*1において、厚生年金保険の被保険者であること。 |
納付要件 | 傷病の初診月の前々月までに被保険者期間の3分の1以上の滞納がないこと (ただし、3分の1以上の滞納があっても初診月の前々月までの直近の1年間に保険料の滞納がなければよい) | 同左 |
障害状態 要 件 |
障害認定日*2における障害の程度が1級・2級であること | 障害認定日*2における障害の程度が1級〜3級であること ※初診日から5年以内になおり、障害手当金の障害の状態になったときは、障害手当金(一時金)が受けられます。 |
*障害共済年金には、保険料納付要件はありません。
障害年金は、20歳前に初診日があるものを無拠出年金、20歳以後に初診日があるものを拠出年金という言い方をすることがあります。
無拠出年金は、20歳前の障害基礎年金のことです。拠出年金は、20歳以後に初診日がある障害基礎年金のことです。
拠出年金と無拠出年金が、違う点は、2点あります。
①20歳前障害の障害基礎年金(無拠出年金)は、所得制限があり、本人の所得額により年金額の全部又は二分の一に相当する部分の支給を停止されることがあります。これは、20歳前障害の障害基礎年金(無拠出年金)が本人がまったく保険料を拠出していないか、ほとんど拠出していないにもかかわらず支給されるものであり、その支給に要する費用は広く国民が負担している租税ないし他の加入者の保険料により賄われているものであることに鑑みた措置です。
②20歳前の国民年金に強制加入ではない期間にある初診日ですので、保険料納付要件を問われない点で、拠出年金とは異なっています。
20歳以後に初診日がある障害年金、すなわち、拠出年金の場合は保険料納付要件を問われます。実際、いざ、障害年金の請求手続きに行かれても、社会保険事務所や市町村役場の窓口で、「保険料納付要件を満たしていませんから年金を受給する資格がありません。」といわれる場合があります。
60年改正後の法律では、『傷病の初診日の前日において、傷病の初診月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が、当該被保険者期間の3分の2に満たないときは障害年金を支給しない。 (ただし、3分の1以上の滞納があっても初診月の前々月までの直近の1年間に保険料の滞納がなければよい)』とあります。(*ご注意:61年4月1日前に初診日のある人は、納付要件の見方は上記の条文とは異なります。)
初診日の前日における保険料の納付状況で判断するのです。あとから納めたものはカウントされないません。その月の保険料をいつ納めたのかが保険料納付要件を満たすかどうかに影響するので、国民年金の保険料は遅滞なく、納付するか、納付できない事情があるときは、免除手続ができないかを含めて、平素から最低限の手続を怠らないようにしておくことが肝心なのです。
障害の程度を認定する場合の基準となるのは、国年令別表、厚年令別表第1及び厚年令別表第2に規定されていますが、その障害の状態の基本は、次のとおりとされています。
(以下、「国民年金・厚生年金保険 障害年金の認定基準」より転載)
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの、すなわち、病院内の生活の場合は、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活の場合は、活動の範囲がおおむね病室内に限られる程度のものである
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身体の機能の障害又は、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする
この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活の場合でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活の場合でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られる程度のものである。
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労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)
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「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
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初診日から1年6ヶ月を経過した障害認定日においては、障害等級に該当する障害の状態になかった者が、同日後65歳に達する前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する障害の状態に至ったときは、その期間内(65歳に達する前日まで)に障害年金を請求することができます。
この制度を事後重症制度といいます。
この事後重症制度による障害年金は、請求年金ともいわれ、請求したときに初めて年金を受ける権利が発生します。
但し、65歳に達する前日までに請求しなければなりません
支給決定がなされれば、請求月の翌月から支給されます。
尚、老齢基礎年金を60歳から65歳までに繰上請求した人は、事後重症による障害年金を請求することはできません。
2級以上の障害の程度に満たない程度の障害の状態にあった人が、新たな傷病(基準傷病)にかかり、65歳になるまでの間に、基準傷病による障害と前の障害をあわせるとはじめて2級以上の障害に該当したときは、本人の請求により障害基礎年金等を受けられます。
ただし、この場合は基準傷病の初診日において本来の障害基礎年金等の支給を受けるための要件を満たしていることが必要となります。
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